柴田元幸さんの翻訳で日本でも知られることになった短編の名手スティーブン・ミルハウザー。『イン・ザ・ペニー・アーケード』は「アメリカの新しい文学」シリーズの1冊として白水社から出版されました。

「ペニーアーケード」とは1セント硬貨で遊べるアメリカの遊園地などにあったゲームセンターのこと。ゲームセンターといっても、そこには時代によってキネトスコープからジュークボックス、ピンボールまで、コインを入れて動く機械が並んでいました。安っぽくて郷愁を誘うんだけれど、ワクワクしてなにか不思議なこと(トム・ハンクスの『ビッグ』みたいな・・・)が起こりそうな人工的な空間。

 ミルハウザーのこの本にも様々な仕掛けの7篇の短編小説が並んでいます。その中でも圧倒的に魅力的だったのは、主人公の名前をタイトルに冠した「アウグスト・エッシェンブルグ」です。