白い箱の中から

 少し奥行のある白い額の中に閉じ込められた小さな13個の世界。作品Ⅰでは、スペード・ハート・ダイヤ・クラブといった4つのスートは台座に行儀よく鎮座し、静止した無音の空間が額の中におさまっています。続く作品では、少女達がスートと戯れ、スートはやがて自由に白い空間を舞う鳥となり、音となります。そして静かな空間にピアニッシモで音楽が流れ出します。

 作品Ⅳ、Ⅵ、Ⅹでは少女たちが散りばめられたスートを拾い集めています。断片的な思い出を集めるかのように、スートをあるべき場所におさめようとする少女達。作品Ⅶでは古紙に書かれた苔のような細かい文字の上に、Ⅷではスートや鳥の隠された迷路の中で、少女たちが何かを探しています。作品ⅩⅡでは、開かれた本からスートや時計、結晶が飛び立っていきます。本に閉じ込められていた古い時代の思いが世界に解き放たれるようです。

 最後の作品ⅩⅢでは、1つの形にまとまりおさまったかに思われたトランプのスートが、動き出し、真っ白な鳥へと姿を変えて額縁を越えて飛び立っていきます。そしてやがて音楽はとだえ、風もとだえ、真っ白な無音の世界に戻ります。